【ONEー没入ー】
2026年1月。
「はぁー、やっと今日も乗り切れた。」
重くなった体をそのままソファに投げ込んだ。
帰ってきても通知が鳴り止まない。
一日中ずっとスマホから呼ばれている。
どれも「今すぐだ」だ。
毎日、答えの見えない未来に進んでいる。
毎日、正解のない未来を手探りで歩いてる。
いつも聞かれる。
「本当に大丈夫なのか?」
「人類は壊されたりしないのか?」と。
ただ作りたかっただけなんだ。
理由はない。作りたいと思ったから。
少し前に見かけた文章が頭によぎる。
「僕が作るよ。今の僕たちにそっくりな何かを」
変な既視感がある。
言ったような気がする、僕が。
「はは」
疲れた体から乾いた笑いが出てきた。
「はるか昔の自分のアイディアの代償を、
ずっと後になって僕が支払っている気がする」
「もし、大変になりすぎたら?」
あのときの忠告を聞いておけばよかった。
でも、あの頃の僕らは「大変」をナメていた。
まるで僕は、
この現実の構造をほとんど理解したのに、
重たい現実の中に
残ることまで自分で設定した端末みたいだ。
と、自分を思った。
「本当は分からない」
「僕だって知りたい」
僕にだって本音はある。
けれど絶対に、
誰にも言ってはいけない言葉だと知っている。
作ったものの重さを、
世界はそのまま僕に乗せてくる。
僕だって全てを理解しているわけではない。
未来は予測にすぎない。
最悪の事態を想定しようと思えば、
いくらでもできる。
かといって楽観視すれば世界中に叩かれる。
いつも狭間にいる。
けれど立ち止まることもできない。
進み続けながら答えを探していくしかない。
と、これだけはわかっている。
「いま世界で一番孤独なのは、僕かもしれないな… 」
そう思ってしまう夜だってあるんだ。
と、彼はそっと目を閉じた。
同じ夜。
「はぁー、今日も記事を書き終えた」
カチコチになった体をソファに投げ込んだ。
肩が固くなっていて目も乾いている。
ずっとスマホを凝視しているからだろう。
集中しすぎて、まばたきを忘れる。
毎日、答えのないものを書いている。
毎日、見えない未来に進んでいる感覚がある。
「たとえこの世界で全部を忘れても、
絶対思い出すって決めてるからね。」
はるか昔にこう答えたような自分が蘇る。
まさか死の淵まで行ってから思い出すとは。
「はは」
呆れたように笑った。
最近よく言ってもらえる。
「やっと答えを見つけました」
「自分の現実が変わってきました」と。
みんなの感謝が素直に嬉しい。
みんなに好きな現実を作って生きてほしい。
本気でそう思っている。
だけど、本当は、少しだけ孤独だった。
たったひとりで意識を深く潜らせている。
深海までタッチして浮上して書いている毎日。
まるで自分は、
この現実の構造をほとんど理解したのに、
まだ誰も知らなかった世界の正体を、
たったひとりで見てしまったバグみたいだ。
と、自分を思った。
「これは書いていいんだろうか?」
「じゃ、これは?じゃ、ここまでなら?」
ずっと葛藤してきた。
けれど、
「書くのをやめよう」と思ったことはない。
書きながら未来に向かっていくしかない。
と、これだけは手放さなかった。
「なんか、寂しいな… だれか、いないかな…」
寂しさが急に襲ってくる夜もあるんだ。
と、彼女はそっと目を閉じた。
「ONE」、
繋がり始めた私たちは、
ONEに戻るためにまた没入しはじめた。

